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エリア特集2015-05-25

文京区内に点在するオリジナル道路標識 どうして多いか調べてみた

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 旧江戸城(現在の皇居)から見て北に位置する文京区は古くから「山の手」と呼ばれ、台地と坂、谷から成る起伏に富んだ地形だ。神田川や現在は暗渠(あんきょ)となった千川・藍染川を低地に、関口台、小日向台、小石川台、白山台、本郷台の5つの台地。区内を東西に移動するためには、勾配の急な坂を上り下りする必要がある。

 「文京区内は起伏がある住宅密集地のため、狭い路地がごちゃごちゃ、うねうねしていて、隘路(あいろ)や行き止まりや階段に対して特に注意を促す必要がある」と話すのは、日本全国の道路標識をコレクションし続けている道路標識マニアの後藤欣樹さん。実は同区内には、そうした事情ゆえに「他の地域で見られないようなオリジナルの道路標識の密集地が存在する」のだという。

 今回、そのオリジナル道路標識の密集地帯を後藤さんに案内してもらった。

■そもそも道路標識って何?

 そもそも道路標識は、「道路利用者に対して、地理の案内や道路の警告、規制などの情報をお知らせする最も基本的なもの」(国土交通省)とされ、案内標識、警戒標識、規制標識、指示標識の4種類に分類される。文京区で見られるオリジナル標識は、このうち黄色と黒で表現される警戒標識に当たる。
警戒標識は「道路上で警戒すべきことや危険を知らせるためのもの」(国土交通省)とされ、法令では27種類の絵柄が定められている。しかし後藤さんによると、「地域の事情により法令の範囲内では収まり切らないことが多く、(警戒標識は)特にオリジナルの比率が高くなる」という。

■いざ現場へ

 後藤さんが「日本全国でも有数のオリジナル警戒看板の密集地域」と話すのが文京区小日向周辺。5月某日、東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅で後藤さんと待ち合わせし現場へ向かった。

▲密集する「この先車の通り抜けできません」看板

 小日向2丁目付近は小日向台の西端に位置し、音羽通りに降りるためには急な坂を下るか、階段を下りるかしかないような崖面となっている。この小日向台地西端から崖に向かって走る道路の入り口には、必ずと言っていいほど「この先車の通り抜けできません」の警戒看板が設置されている。

 ここが文京区オリジナルの警戒看板の密集地域。「看板に描かれた車のシルエット、道路の幅、×の線の太さや色など、全て異なるデザインになっている。伝えようとしていることは同じなのに文言も少しずつ異なる。法令で定められた絵柄ではないため、こうやって看板に個体差が生まれるのが面白い」と後藤さんは魅力を語る。

「この先車の通り抜けできません」

▲立体感ある「この先階段あり」看板

 密集地以外にも面白い看板があると後藤さんが案内してくれたのがこの看板。「『この先階段あり』の看板はいくつも見てきたが、立体感ある図柄を採用しているのはここでしか見たことがない」と後藤さん。ちなみに階段と共に描かれている矢印は下り階段であることを示しているらしい。どちらにせよ車両は通行できないので、歩行者に向けても階段があることを知らせているものと思われる。

▲激レア 手描き風の「この先階段あり車両の通り抜けできません」看板

 日本全国を巡ってみても「ここだけ」と後藤さんが話すのが、この手描き風看板。ところどころ絵柄は波を打ち、「STOP」の書体もどこかバランスが味わい深い。明らかに他の警告看板と比べても手作り感が否めない。標識マニアの後藤さんをしても、「これは1、2を争うくらいにお気に入り」と評する。

▲お気に入りの看板と後藤さんのツーショット

■区の見解は

 どうしてこんなにも文京区にはオリジナルの警告看板が多く、そしてユニークな絵柄になっているのだろうか。真相を確かめるべく文京区に話を聞いた。

 設置の経緯について、文京区の担当者は「文京区はもとより起伏の富んだ地形のため、細い路地や坂が多く、道が入り組んだ街区となっている。そのため、現在の警告看板が設置される以前から、文字が書かれた木製看板等を道路脇に設置するなどして注意を喚起していた」という。しかし文字看板だけでは看板の内容を一目で理解することが難しく、「当時の地元の方からも『分かりやすい看板を設置してほしい』と要請があったため、警戒看板を設置に踏み切ったと聞いている」と話す。

 その後、同区では早速、警戒看板の設置を検討するも、法令で定められた警告看板には「通り抜け禁止」などを道路利用者に適切に注意喚起できる絵柄なかった。通常そうした場合は「その他の危険」として、黄色地に黒で「!」が表現された標識に、「この先車通り抜けできません」など具体的な注意を文字で補うが、それでは住民から要請のあった「分かりやすさ」が損なわれてしまう。「詳しい記録は残っていないが、そうした事情から当時、絵心のある職員が絵柄を検討し、オリジナルの警戒看板を発注・設置したと聞いている」と区担当者。

 それぞれの絵柄や文言が異なる理由については、「発注先や時期によって微妙に絵柄や言葉が違ってしまう」と苦笑いする。

■オリジナル交通標識の世界

 後藤さんは「オリジナルの図柄の頻度は、道路管理者がどれだけまめかずぼらかというところに依存する。そういった意味で文京区は非常に区民に優しい区なのでは」と話す。

 特有の地形と区役所職員の少しばかりの絵心から生まれた文京区のオリジナル警戒看板。何気ない街の道路標識にも物語があり、見方によっては新しい街の楽しみ方となりうるのかもしれない。

(文責=西丸尭宏/文京経済新聞)

*編集部の判断に基いて、文中の表記を一部変更しました。(2015年5月21日・編集部)

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