茗荷谷駅前の書店「Booksアイ・茗荷谷店」(文京区大塚1)が1月25日、11年9カ月にわたる営業に幕を下ろした。
お茶の水女子大学をはじめとする多数の大学や国立大学付属小中高校が集まる学生街・茗荷谷の駅前で、年中無休、平日は23時までの営業を続けてきた同店。2008(平成20)年に閉店した「日進書房」の店舗を居抜きで引き継ぐ形で開店し、「街の本屋」として親しまれてきた。
「茗荷谷文庫」と名付けたご当地書籍コーナーや、店独自の視点で組まれた特集棚など、限られたスペースでの工夫が評判を呼んだ。昨年、NHK大河ドラマ「いだてん」が放映されると、金栗四三(かなくりしそう)の通学路として話題になった茗荷谷のマップを掲示した特集コーナーも設けた。
年明けに閉店予定の貼り紙が出されると、地域のSNSなどで話題に上がった。
営業最終日、店長の野口忠義さんは普段同様にツイッターで売れ行き状況などをつぶやき続けた。20時過ぎ、閉店を知った作家の能町(のうまち)みね子さんがサイン本4冊を持参して駆け付けると、野口店長が「あと2時間半で閉店してしまいますが、もし間に合う方がいれば」(原文ママ)とツイート。それから30分ほどで完売したという。
22時半を回ったレジでは、「いつも気になっていたが、BGMは何を流していたのか」と尋ねる女性客の姿も。「ラジオのAFN。日本語の曲が流れると、言葉が邪魔して集中して本を選べないのではと思って」と野口さんが答えると、女性は「やっと聞けてすっきりしたけれど、お店がなくなってしまうのは寂しい」と、購入した書籍を受け取った。
野口さんは「大型店の閉店の話もよく聞かれる昨今、自前の店舗ではなく家賃を払いながらの書店経営はひと苦労」と話す。「ここは会社帰りにふらりと立ち寄るなど、日常使いのお客さんが多いので、ネット販売などの影響を受けた感触はあまりなかった。学生街でありながら、大学生を引き寄せられなかったのが敗因だろうか」とも。2025年には中央大学が茗荷谷に移転予定だが、「残念ながら、ちょっと間に合わなかった」と苦笑した。
当初は今月末まで営業予定だったが、在庫整理などの残務期間も考え、予定を繰り上げて25日までの営業とした。「次も書店を」と望む声もあるが、閉店後の店舗の借り主はまだ決まっていないという。