特別公開講座「『触る文化』が拓(ひら)く共生社会の未来~ユニバーサル・ミュージアムの実践から」が6月14日、文京シビックセンター(文京区春日1)で開かれた。文京アカデミーが主催し、文京アカデミア生涯学習司の会が企画協力した。
講師の広瀬浩二郎さんと文京アカデミア生涯学習司の会の増田純さん
講師は国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎さん。筑波大学付属盲学校(現筑波大学付属視覚特別支援学校、目白台3)の卒業生でもある広瀬さんは、「座頭市フィールドワーカー」を自称し、全盲の文化人類学者として「誰もが楽しめる博物館(ユニバーサル・ミュージアム)」づくりの実現に取り組んでいる。
講座では、広瀬さんがコロナ禍に実現させた「ユニバーサル・ミュージアム展」や、各地のミュージアムでの「さわる鑑賞プログラム」などの事例を交え、「さわる文化」の可能性について話した。講座の合間には受講者全員で、広瀬さんオリジナルの「さわる鑑賞のための準備体操」をする場面もあった。
広瀬さんは、「(さわる鑑賞は)見えない人が視覚を補うためではなく、触覚を敏感に保つためのもの。ミュージアムを『目で見る』だけでなく『全身の感覚でみる』体験の場に変えていく試みは、健常者か障害者かという二項対立の垣根を取り払い、触感豊かな共生社会の実現につながる」と話す。
講座を企画提案した同会の増田純さんは「以前、江戸東京博物館でボランティアをしていた時に、広瀬先生の研修を受けて世界観が変わった。その感動を区民の皆さんにも体験してほしかった」と話す。
区報で開催を知ったという区内在住の大山裕さんは「仕事で博物館の企画に携わっている。デジタル化が進み、オンライン鑑賞などの機会も増えた昨今、逆に実物の『もの』としての価値が重要になっていると感じる。(講座を聞いて)触る文化は博物館の本質を明らかにしているとイマジネーションをかき立てられた」と話す。