雑誌「谷中・根津・千駄木(やねせん)」全94号分の編集後記を一冊にまとめた書籍「谷根千(やねせん)の編集後記」が6月1日、月兎舎から刊行された。
「谷中・根津・千駄木(やねせん)」は、「保育園のママ友」だった森まゆみさん、仰木ひろみさん、山﨑範子さんの3人が、台東区谷中、文京区根津・千駄木の3エリアにテーマを絞り、取材・執筆から編集、販売までを担当した季刊誌。1984(昭和59)年10月の第1号から2009年8月の第94号まで年4回発行で25年間続いた。取り扱い書店が同雑誌を「やねせん」と呼んだことから、3エリアを表現する通称も「谷根千(やねせん)」といわれるようになった。
廃刊から15年がたった現在、森さんは作家、仰木さんは旧安田楠雄邸庭園(千駄木5)のプロパティマネジャー、山﨑さんはフリー編集者として、それぞれの活動を続けている。山﨑さんが三重県松阪市に移住し、三重のローカル雑誌「NAGI~凪」発行人の吉川和之さんと出会ったことから話が進み、「やねせん」の編集後記だけを集めた一冊を刊行することとなった。
「やねせん」創刊当時から現在もバックナンバーなどを取り扱う「往来堂書店」(千駄木2)の笈入建志店長は「店長になる前から『やねせん』の存在は知っていたが、直接関わったのは60号くらいから」と話す。「山﨑さん自ら、いつも納品と集金に来ていた。地域の高齢者の言葉を残したいという使命感で動く一方、時には取材と称して著名な人に会えることを喜ぶミーハーな一面もあるなど、苦労しながらも楽しんで制作していたように見えた」と振り返る。「好きなこととはいえ、地域を限定してネタを集め、子育ての傍ら3人で機関誌の発行を25年も続けた熱量は並ではない」とも。
笈入さんは「書名の通り、編集後記だけを載せている。取材をしたが記事に書ききれなかったことや3人の日常の一端など、四半世紀にわたる当時の『リアル』が読める。雑誌の『やねせん』を読んでいない人には伝わりづらい内容もあるかもしれないが、想像で補いながら楽しんでほしい」と話す。「店頭には雑誌『やねせん』のバックナンバーもあるので、合わせて読んでいただけたら」とも。
判型は四六判、全256ページ。価格は1,760円。