文京区が現在、作家・樋口一葉ゆかりの「旧伊勢屋質店」(文京区本郷5)の保全・活用などを目的に設立した「一葉募金」への寄付を呼び掛けている。
晩年の一葉がかよった旧伊勢屋質店。今なお当時の風情を残す建物外観
日本の五千円紙幣の肖像をはじめ、「たけくらべ」「にごりえ」などの代表作で知られる女流作家の樋口一葉は、24歳の若さで亡くなる短い生涯のうち約10年間、文京区内に居住していた。
区が存続を呼び掛ける同建物は、一葉が18歳で転居してきた本郷区本郷菊坂町(現・同区本郷4)で暮らした際に生活苦の中で通ったとされ、国登録有形文化財にも指定されている。建物は明治20年移築の蔵、明治40年築の見世、明治23年築の座敷からなる。
これまで所有者が建物の維持管理経費を負担してきたが、個人での維持の限界を区に訴え売却の意向を示し、区内の大学が買い取りに名乗りを上げていた。同区では、歴史的建造物や文学的史跡として価値の高い「旧伊勢屋質店」を未来へ残し、区民の宝として活用していくため、売却金額の差額を補うかたちで募金を設立した。
大学が買い取った場合、平日は大学の授業などで建物を活用しながら、休日は同区の観光拠点として一般開放する予定という。
同区担当者によると、2月27日時点で55件ほどの寄付の申し出があったという。寄付は同区アカデミー推進課で受け付ける。