早稲田大学(新宿区)で行われた「日本企業にとってのエフェクチュエーション」と題したシンポジウム開催後の夕食会が江戸川橋のビーガンレストラン「PLANT KITCHEN TOKYO」(文京区関口1)で開かれた。主催は一般社団法人「日本エフェクチュエーション協会」(兵庫県神戸市)など。
早稲田大学でエフェクチュエーション論の基調講演を行うサラス・サラスバシー教授
満席となる200人以上の参加者を前に基調講演を行った、起業家の意思決定理論「エフェクチュエーション」の提唱者として知られる米バージニア大学教授、サラス・サラスバシーさんも同店を訪れた。サラスバシーさんは、2000年代に起業家の思考プロセスを体系化した同理論の第一人者とされる。
サラスバシーさんがビーガン料理を好んでいることを踏まえて夕食会場に選ばれた同店。サラスバシーさんはビーガン料理を一皿ずつ提供するスタイルに感激し、コースの最後に出された同店の代表メニュー「ビーガンカレー」について、「故郷の南インドの味のよう」と喜んだ。
同店はCSA(地域支援型農業)に取り組む農家と契約しており、毎回、箱を開けるまで何がどのくらい入っているか分からない状態で野菜が届く。店主の藤原美穂さんは、その「手元にある野菜」と向き合い、その日のインスピレーションでコース料理を組み立てている。この手法は偶然にも、サラスバシーさんが提唱する「目標を決めてから手段を探すのではなく、手持ちの手段から何ができるかを考える」という理論を体現するものだった。
理論に深く共感した藤原さんはさらに話を聞くため、2日後に同協会代表理事・樋原伸彦さん(早大ビジネススクール)の早大の研究室を訪問。樋原さんは「エフェクチュエーションは、冷蔵庫の余り物で料理する思考法」と説明。アメリカで行った料理ワークショップの実践例も挙げ、「大学の中では難しかったが、あのキッチンなら本格的に再現できる。実践的な学びの場として活用しては」と背中を押した。
藤原さんは「世界的な権威であるサラスバシー教授に料理を楽しんでもらえて光栄。今後は食を通じてエフェクチュエーションを学べる機会も作っていきたい」と意気込みを見せる。