文京・本郷の旅館・鳳明館 森川別館(文京区本郷6)が3月14日、期間限定宿泊プラン「文豪缶詰プラン」を発表したところ、即日完売した。
昭和30年代築の同旅館。かつては100軒以上が軒を連ねる旅館街だった本郷で、現存する4館のうちの1館。新型コロナウイルス感染拡大の影響で団体客のキャンセルなどが相次ぎ、厳しい状況にある中、ユニークな企画で集客を図る。発案は同館の営業・商品企画を担当する海津智子さん。
話題となった「文豪缶詰プラン」は、森鴎外や石川啄木など多くの文豪が暮らした同地域にちなみ、「旅館で缶詰になって文豪気分が味わえる」というもの。宿泊客は「緊急事態以外は宿から出られない」のが基本で、部屋にこもって執筆作業を行うことを想定している。編集者に扮(ふん)したスタッフが希望時間に「進捗(しんちょく)コール」の電話を入れるサービスが付く。レトロな文机のレンタルをはじめ、適宜催促の声を掛ける担当編集者付きや外出しないよう見張りをつけるオプションもある。
同館・おかみの大曽根美代子さんは「自粛ムードの今だからこそ、当館の人口密度の低さや窓からの換気の良さが強みになると思った。感染防止に最大限の配慮をする中で、楽しくこの状況を乗り切ろうと文豪缶詰プランを実施することにした」と話す。昨年5月にトライアル実施し、今回が2回目の販売。14日10時に予約開始し、同日のうちに5日間分の限定プランが完売した。「SNSで予告した途端に反響があり、今の言葉で言えば『ネット上でバスっている』状況だった」と大曽根さん。3回目の実施も検討しているという。
同館では他に、廊下や階段に面した部屋を「人の気配が感じられる部屋」として特別料金で提供する通年プラン「あゝ青春の下宿部屋」などがある。「東京大学に程近く、下宿街でもあった本郷で昭和の雰囲気を味わっていただければ」と大曽根さん。「セントラルヒーティングがない伝統的建築の、冬は寒くて夏は暑いというマイナス面が、今は自然風による換気の良さとしてプラスに作用している」とも。朝食は「免疫力アップ」の献立の提供もある。