千駄木の森鴎外記念館(文京区千駄木1)で現在、2012年の開館以来初の新収蔵品展が開催されている。
初公開となる森類の『柿・栗・筍』(昭和41年)の直筆原稿。同人誌「小説と詩と評論」に発表された作品で、榛葉英治(直木賞作家)によって芥川賞予選作品に一票が投じられた。
同展は会期を2期に分け、3月9日までの前半を「パート1:新収蔵品にみる鴎外の横顔」として知られざる鴎外の顔を紹介。開館から2014年3月までに新たに収蔵、修復を終えた資料は23点。鴎外筆、鴎外宛の書簡、鴎外所蔵の図書、写真帖、弟・篤次郎や長男・於菟、長女・茉莉に関する資料、当時の東京の様子を伝える写真、鴎外と交流のあった文人や芸術家に関わる資料や作品など、その内容は多岐におよぶ。
同展ではその中から、鴎外を含め24人の同窓生の写真が収められている東大卒業25年記念写真帖など、書簡や写真、美術品など鴎外の多彩な活動を知ることのできる約15点を展示する。中でも、岡田三郎助作のパステル画は、かつて鴎外の暮らした観潮楼(現:森鴎外記念館)に飾られていたものとされる。
3月11日~4月19日は「パート2:森類の生涯-ボンチコから作家へ」とし、鴎外の三男・類の生涯を紹介。親族より寄贈された著作や日記などの自筆原稿、会津八一、志賀直哉などからの書簡や親せき家族間の往信・来信、鴎外や妹の茉莉、杏奴の写真など、6000点を超える多様な旧蔵資料の中から20点余りの資料を初公開する。
父・鴎外を敬愛しながらも、自らを「不肖の子」と称して父の威光に苦悩した類。自筆原稿や書簡などを眺めてみると、作家、書店「千朶書房」主人など、個として生き抜いた類の姿が浮かび上がってくる。
「これまであまり光の当たることのなかった森類の生涯からは、常設展で語られるものとはまた違った父・森鴎外の姿が見えてくるかもしれない。」(森本副館長)
3月18日、4月8日の14時からは学芸員によるギャラリートークを開催(申し込み不要)。一つ一つの展示品が持つ背景や物語を学芸員が解説。膨大な収蔵品の収集や管理、保管など、文学館事業の一端を知ることもできる。
開館時間は10時~18時(最終入館は17時30分)。期間中の休館日は3月10日・24日。