文京・関口の我楽田工房(文京区関口1)で9月8日、地域の中で働く新しい看護師の育成を目指す「コミュニティナース育成プロジェクト」の出発式が行われた。
「コミュニティナース」とは、病院や施設、訪問介護に従事する看護師と異なり、地域の中で自治会や町内会と連携しながら、その専門性や知識を生かして健康的なまちづくりの支援を行う医療人材のこと。地域で中長期的に住民と関わることを目指し、その活動は健康相談などを受け付ける「まちの保健室」の運営のほか、買い物代行や普段の見守りなどを含めた地域巡回、住民とコミュニケーションを取るための場づくり、地域のイベント支援など多岐にわたる。
看護師が住民として地域に参画していくことで、地域が抱える少子高齢化や地域医療・介護の問題の解決や地域コミュニティーの新しい担い手としても期待されている。看護師からも、病院以外で働く新しいワークスタイルとして注目を集めている。
8日に行われた出発式は、今年6月から行われてきた「第1期コミュニティナース育成プログラム」の最終回で、受講生らがこれまでの講座や京都府綾部市でのフィールドワークを通して学んだことをまとめ、自身がコミュニティナースとして活動していくためのプランの発表を行った。会場には、来年度から実証実験としてコミュニティナースの受け入れを決めた綾部市役所や受け入れ地域となる奥上林地区、西八田地区の関係者らが駆け付け、将来のコミュニティナース候補生らの声に耳を傾けた。
受講生の一人、佐藤春華さんは同プログラムを通して来年度から綾部市でコミュニティナースとして活動することを決めた。「看護師にはこんな働き方もあるということを知った。綾部市でのフィールドワークの影響も大きかった。地域の人と交流する中で綾部がとても好きになって、ここでコミュニティナースとして活動できるなら絶対にやってみたいと思った。昔から何か新しいことを始めるのが得意だったし、仲間からの後押しもあったので決断できた。来年からは綾部で、看護師の新しい働き方を創造していければ」と意気込む。
同プログラムの運営と講師を務めたNPO法人「おっちラボ」代表の矢田明子さんは「看護の力で地域の課題を解決していきたい。元気な地域づくりをしていきたいと始めた活動。この輪がどんどん大きくなっていけば」と話す。
同じく運営に当たった「ボノ」(関口1)の横山貴敏さんは「病院で働く看護師ではなく、地域の住民と一緒に活動する看護師の新しい事業モデル。地域住民を巻き込む、新しい地域医療や介護、包括ケアの仕組みとなると思う」と話し、今後10年をめどにコミュニティナースの活動を100地域まで増やす目標を明かした。
同プロジェクトでは、コミュニティナースの人材育成とともに、地域の受け入れ環境の整備や収益モデルの構築など、コミュニティナースが自活できる仕組みづくりを行う。今後は、2016年11月~2017年2月に行う「第2期コミュニティナース育成プロジェクト」の受講生募集や、第1期生によるイベント企画、来年度から綾部市で始める「コミュニティナース留学プログラム」の準備などを行う。