文京の「トーキョーアーツアンドスペース本郷(TOKAS)」(文京区本郷2)で1月24日~27日、アーティスト・宮田篤さんによる参加型作品「『びぶんブックス』ことばの店:微分帖」が開催された。
同企画は、トーキョーアーツアンドスペース(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館)が主催する企画公募プログラム「OPEN SITE 2018-2019 (Part2)」の一環で、小規模ながらも実験的な企画を対象に新設された「OPEN SITE dot」のカテゴリーで選ばれたもの。
「微分帖」とは「みんなでつくるおはなしの小さな本の名前」。その場に居合わせた数人で一つの物語をオリジナルのワークショップ形式で創作する。最初の1人が二つ折りにした用紙に4ページ分の短い物語を書き、物語を読み上げたら次の人へバトンタッチ。次の人は、その物語に差し挟むように4ページ分の短い物語を書き足して読み上げる。同様にリレー形式で物語を肉付けしていき、最初の人の手元に戻ったところで作品が完成する。途中にページが挿入されるため、書き出しを務めた筆者の予期せぬ展開にはなるものの、起承転結の「起」と「結」は変わらない。書き終える度に作品を音読して共有することでコミュニケーションが生まれるのも特徴。
今回は、これまでに作られた微分帖を、書店に見立てた「びぶんブックス」として一堂に展示したほか、創作体験の場を設置。詩人や連句人とのコラボレーションも行った。
ワークショップを通してコミュニケーションの多様性や不完全性、重要性の共有を目指す宮田さん。2008年から同作の活動を続け、さまざまな人と創作した「微分帖」は1000冊を超えるという。「今までは美術をテーマとして微分帖を紹介していたが、今回、実験的なプランとして連句や詩の人とコラボしたことで、文芸寄りの人など客層に変化があったことは新たな体験となった」と宮田さん。「普段はワークショップ体験の成果物は引き取ってコレクションにさせてもらうルールだが、それだと書いた人にさみしさが残るのではという思いもあり、今回は古書店に見立ててノベルティーと交換するなど、『お店やさんごっこ』のような要素も取り入れた。期間限定のびぶんブックスは惜しまれつつ閉店してしまうが、またどこかで誰かの目に触れたらうれしい」とも。