車いす利用者に特化したレストラン「バリアフルレストラン」の体験イベントが2月12日、東京大学(文京区本郷7)赤門総合研究棟で行われた。主催は、「誰もが誰かのために共に生きる委員会」、同大大学院教育学研究科付属バリアフリー教育開発研究センター。
「サービス介助士」の資格認定を行う「日本ケアフィット共育機構」が運営を手掛ける同イベント。参加対象者は招待制で、12日=主にメディア関係者、13日~15日=サービス介助士導入企業。
期間中、会場には天井高の低いセルフサービス型レストランを開設。「車いすユーチューバー」の寺田ユースケさんが店長として参加者を出迎える中、店員が「2足歩行の方だけでの入店ですか? 次回は車いすユーザーの介助者と同行してください」などの言葉を参加者たちに投げ掛けながら店内に誘導した。
車いすでの来店を想定して造られたレストランに椅子はない。健常者が立食するには低すぎるテーブルで、参加者たちは「店の景観が悪くなるので、2足歩行の方は中腰でお願いします」と店員から注意を受けながら「不便な食事」を体験した。低い位置に貼られた掲示物、車を滑らせやすいツルツルの床など、店内は至るところに「車いすにやさしい」工夫が施され、マイノリティーとマジョリティーの価値観が逆転した空間を演出。参加者は「不便の本当の原因は何か」を問われた。
寺田さんは「2足歩行の人にもっと丁寧に接して」と店員を叱る一方、「こんなに大勢で2足歩行の人に一度に押しかけられたら正直迷惑だけど、そんなことは店の評判に差し障るから口に出せない」と明かす一幕も。寺田さんは「これは演出だが、車いすユーザーにとっては『あるある』ネタばかり」と話す。
「階段しかない施設や、高所にある陳列棚など、社会や環境のあり方、仕組みが障がいを作り出している」とも。「障がい者を排除するつもりはなくても、マジョリティーを優遇していることに無意識な社会が、マイノリティーを排除する結果を生んでいる」と寺田さん。
日本ケアフィット共育機構の佐藤雄一郎さんは「車いすユーザーが多数派の仮想社会を体験することで、障がいの社会モデル理解につなげ、多数派を前提として作られた社会のあり方を見直すきっかけになれば」と話す。「障がいの有無に関わらず、誰にも違いがある。その違いが格差を生むのではなく、違いを超えて誰もが誰かを支え相互に作用する、本来の意味での共生社会をつくりたい」と意気込む。
一般対象の「バリアフルレストラン」は今秋、都内での公開を予定している。