千駄木の森鴎外記念館(文京区千駄木1)で現在、コレクション展「奈良、京都の鴎外─今日オクラガアキマシタ。」が開催されている。
鴎外も参列した1915(大正4)年の「大正天皇 即位の礼」から、100年という節目を記念して企画された同展。観光名所として知られる奈良・京都と鴎外の関わりを、原稿や書簡、家族へ宛てた絵はがきなどを通して、子を持つ父・鴎外としての側面も交えながら読み解いていく。
京都と鴎外の関わりについては、陸軍軍医総監として参列した大正天皇の即位の礼の出来事を中心に構成。新聞社より依頼を受け、即位式や大嘗祭(だいじょうさい)、供宴などの子細な記録を執筆した「盛儀私記」(せいぎしき)の自筆原稿のほか、絵はがき、当時の官報などを展示。儀式の合間に弟の森潤三郎とともに古人の墓巡りをしたことなども併せて紹介する。
奈良と鴎外については、1916(大正5)年4月に陸軍軍医総監を辞任した後、1918(大正7)年から就いた帝室博物館総長兼図書頭として職務に当たった、正倉院の曝涼(ばくりょう、虫干し)で奈良を訪れた際の出来事を中心に構成。奈良での日々を記録した日記「委蛇録(いだろく)」や短歌「奈良五十首」などから、鴎外の奈良での足跡をたどる。
同展では鴎外が奈良から子どもたちに宛てた絵はがきも時系列に展示。「若草山に登った」「奈良の鹿の数は600」など奈良のことを伝えながら、末尾には「パパ」と書くなど、父としての鴎外の一面を垣間見ることができる。同展のタイトルである「今日オクラガアキマシタ。」とは、鴎外が曝涼の際に正倉院の「お倉」が開いたことを家にいる子どもたちに知らせる絵はがきに添えた文章にちなんだもの。
同展担当者は「1月5日~19日には、鴎外が最期の年に娘の杏奴に送った『レンゲの押し花』の現物も展示する。お時間ある方はぜひ見ていただければ」と話す。
来年1月16日・27日の14時からは学芸員によるギャラリートークを開く。1月9日には、東京国立博物館の田良島哲氏による「森鴎外と奈良、京都」と題した講演会を行う。講演は参加無料。定員は50人(事前申込制)。申し込み締め切りは12月25日。
開館時間は10時~18時(最終入館17時30分)。12月29日~1月3日、26日は休館。観覧料は一般300円(中学生以下無料)。2月7日まで。