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都立工芸高校生が会社案内制作 新たな産学連携の試みとして

アーク・メイカー社長の関根紀之さんと都立工芸高校グラフィックアーツ科の生徒ら

アーク・メイカー社長の関根紀之さんと都立工芸高校グラフィックアーツ科の生徒ら

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 都立工芸高校(文京区本郷1)の生徒らが会社案内のデザインに取り組み、2月9日、授業内で完成作品の納品が行われた。

デザイナーによるレクチャー授業の様子

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 フリーマガジンとオンライン版で展開する工業高校生応援メディア「チョイス!」(発行:アリトリズム編集部)が呼び掛け、店舗大工を営むアーク・メイカー(以上、北区)がクライアントとして名乗りを上げて実現した同企画。同校グラフィックアーツ科の3年生8人が約半年をかけて制作に取り組み、コンペを経た3作品が印刷製本された。

 担当教員の久保遊さんは「本来のデザインの仕事はクライアントの要望をかなえるために修正を繰り返しながら作品を作るが、教育現場では生徒は自分の作りたいものを作り、教員がそれを評価することしかできない。実践的な学びを取り入れたいと考えていた」と話す。「コロナ禍でこの企画に取り組み、集まるのが難しい、限られた時間で制作しなくちゃいけない、今までよりもさらに厳しい状況だった。これから先の生活の前に、こういった具体的な活動を通して経験できたのはすごくよかった」とも。

 「チョイス!」編集長の阿部伸さんは「生徒たちは工場見学や取材を重ね、ラフ案の提案・企業からの修正を受けながらのレイアウト見本制作・初校・再校と、プロのデザイナーが行う業務と同じ工程を経て、作品を完成させた。プロによるレクチャーや、生徒自身がディレクターとなってプロカメラマンによる撮影を行うなど、通常の授業ではできない体験になったのでは」と話す。

 表紙のロゴには、本物の板をはんだごてで焼いて作るウッドバーニングという手法が使われた。「最初にラフ案を見せられたときはPhotoshop(フォトショップ)を使って処理をするものだと思っていたが、焼き印と聞いて驚いたとともに感動した。仕事ではコスト面からパソコン上で『偽物』を作りがちだが、『本物』をデザインに落とし込む作業に、デザインって本来こういうことだよなと、逆にこちらが勉強になった」と阿部さん。

 アーク・メイカー社長の関根紀之さんは「いいものが出来上がった。これを配って仕事をもらえたらなと思うし、これだったら絶対もらえるとも思う。(生徒たちの)熱意が入っているので、大事に使わせてもらいたい」とほほ笑んだ。

 生徒からは「相手が求めているものに合わせて作っていくことは一番逃げてきたことだったので苦労したけれど、考えていけばたどり着くんだという考えに至ったことが一番大きい経験」「お客さんがいて、それに応えながら物を作るというのは、みんなほとんど初めてだから難しかった。みんなの苦難を間近で見て、そんな苦難があって、こうやって完成品を見ると感動する」「チームワークのおかげでメンバーに相談に乗ってもらったりする機会が多く、いろいろ学ぶことができた」などの感想が上がった。

 「チョイス!」では新年度に向けて、同様の取り組みへの協力企業を募っている。

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