暮らす・働く

廃業した銭湯の富士山ペンキ絵が最後のお披露目 文京・白山の倉庫で

文京建築会ユースの栗生はるかさん(左)と、元「月の湯」オーナーの山田義雄さん(右)

文京建築会ユースの栗生はるかさん(左)と、元「月の湯」オーナーの山田義雄さん(右)

  • 0

  •  

 文京区内の倉庫(文京区白山2)で6月25日、廃業した銭湯をしのび、銭湯の地域力について語り合うイベント「銭湯でまちつなぎ」が開かれた。文京建築会ユース、NPO法人市民科学研究室、谷根千CBPR研究会の共催。

養生を施されたペンキ絵と、絵を外した際の記録画像の展示

[広告]

 同イベントでは、昨年5月に廃業した月の湯(目白台3)と、同じく昨年9月に廃業した菊水湯(本郷3)から解体前に引き取った品々を保管する倉庫が1日限定で一般公開された。会場には、かつて月の湯の大浴場を飾った富士山のペンキ絵や、滝登りコイがあしらわれた壁タイルをはじめ、菊水湯の看板やロッカーなど、貴重な品々が並んだ。「銭湯の地域力」をテーマにトークも同時開催され、かつての常連や銭湯ファンなどが集い、当時の姿を懐かしんだ。

 同ペンキ絵は、今は亡き銭湯絵師・早川利光さんによるもので、最後に塗り替えられたのは2009年。「早川ブルー」と呼ばれる鮮やかな青色が人気だったという。板にじか描きする現代の手法とは異なり、キャンバス地に描かれているのも特徴だ。膠(にかわ)と和紙で養生された状態で、解体時の様子を記録した映像とともに展示された。

 建築的視点から地域の魅力を再発見することを目的に、区内銭湯の調査などを続けている文京建築会ユース代表の栗生はるかさんは「取材を重ねるうち、建物としての魅力だけでなく、その場で営まれている関係性にも興味を引かれた。銭湯は毎日顔を合わせる、生活の延長にあるコミュニティーで、『社会教育の場』にもなっている。まきや井戸水を使った地域循環型のエコシステムも備え、有事には井戸水の活用も可能。防災や高齢者福祉、地域による子どもの見守りなど、現代社会が抱える課題に対する答えが銭湯にはある」と話す。

 「銭湯として存続するのがより良いけれど、入浴機能はなくても、コミュニティーの場として残すことはできないかとさまざまな活用提案もしてきたが難しい。せめて地域の関係性を何かしら残したいとの思いから、解体直前に品々を引き取ったり、それを欲しいという人に引き継いだりしてきた。本当は博物館のようなところに一式引き取ってほしい思いもあるが、今回の展示のような形で、思い出したい時に触れ合える、地域の人の記憶装置にできるといい」と栗生さん。

 同ペンキ絵は今後、富士市かぐや姫ミュージアム(静岡県富士市)に引き取られ、修復を施された後に展示される予定。富士山の世界文化遺産の登録にちなんで記念館を作るので展示したいと富士市より連絡を受けた元「月の湯」オーナーの山田義雄さんが、栗生さんの活動を知って話をつないだことから実現に至ったという。

 「コイの壁タイルもペンキ絵とともに富士市に引き取られる話があるが、できればタイルだけでも地元で保管したい。銭湯のペンキ絵やタイル絵は東京の文化とも言えるので、せめて都内に残しておきたいという思いもある」と栗生さん。保管と展示が可能な引き取り先が見つかれば検討したいという。

  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース