旅館「鳳明館(ほうめいかん)・森川別館」(文京区本郷6)で7月11日、鳳明館にまつわる思い出の写真を表彰する「鳳明館フォトコンテスト」の授賞式とトークイベントが開かれた。主催はnarrative(ナラティブ、奈良市)と同館。
鳳明館は、東京大学に近い本郷の下宿街から発展した旅館。改修工事を控える中、鳳明館にまつわる思い出を残そうと、3月から4月にかけてフォトコンテストを開いた。鳳明館での写真とエピソードを募ったところ、131点が集まった。
授賞式では、本館・台町別館・森川別館の棟ごとに「人情賞」「風情賞」「意匠賞」の3部門を設け、審査員が計10点を選んだ。鳳明館の飯箸雄一社長ら4人の審査員が受賞者に表彰状を手渡した。妊娠中だった10年前に着物姿で撮った写真を、当時おなかにいた子どもと一緒に思い出を振り返る人や、1973(昭和48)年の修学旅行で撮った写真と今の姿を重ねた人もいて、会場には思い出深いエピソードが並んだ。応募のあった全131点は同日12時~16時に写真展として公開した。
本郷の旅館や銭湯の廃業を見つめてきた建築家の栗生はるかさんは「銭湯が次々に壊されるのを見てきた。この象徴的な旅館まで残せなかったら、自分たちの地域とは言えない。自分が住まう地域としてこうあってほしいという思いがある」と話す。
授賞式に続くトークイベントは「鳳明館のこれから」をテーマに開いた。コロナ禍で経営が揺らぎ、マンション用地としての売却話も浮上する中、本郷で育った総合建築業の松下産業(本郷1)の社長の決断により、鳳明館は松下産業グループに承継された。設計に携わる一般社団法人「本郷建築デザイン研究所」代表理事の細見直史さんは「これまでは古い建物を調査し、記録して見送るばかりだった。数字だけ見れば社内で反対されてもおかしくない決断で、この街を何とかするという社長の思いがなければ残せなかった」と振り返る。
同席したナラティブ社長の大久保泰佑さんは、各地で古民家再生を手がけてきた。3棟全てを高級な宿泊施設にするのではなく、地域に開かれたコワーキングや交流拠点を目指すという。大久保さんは「単なるホテルにして外から来て泊まって帰るだけでは、地域に何も残らない。息子や孫のように鳳明館を大切に思う人が1000人いれば、本当に愛される旅館になる。鳳明館の推し活をしたい」と話す。